胃腸炎
胃腸炎は子供も大人もなる病気です。
通常、健康な成人で胃腸炎が重篤となることはありませんが、病気にかかり衰弱している人、年少または高齢の人では、脱水や電解質のバランスの不具合が起こり、生命を脅かすことがあるので早めに医療機関を受診することが大切です。
また、感染性胃腸炎の感染力は強力なので、家族間などで感染しないように注意することが必要です。
目次
胃腸炎とは?
胃腸炎とは、なんらかの原因により、胃や腸に炎症が起こり、下痢や腹痛を起こす疾患の総称です。
また、発熱することもあり、頭痛や倦怠感を伴うこともあります。
通常、胃腸炎の原因は細菌やウイルスなどの微生物に感染することで起こりますが、毒性の化学物質や薬の摂取が原因となることもあります。
胃腸炎の症状とは?
代表的な症状は、発熱・下痢・吐き気・嘔吐・腹痛です。
症状がひどい時は下血や、脱水症状に至ることもあります。
症状がでている期間はウイルス性胃腸炎の場合5~7日程度といわれており、多くの場合は自然と治ってきます。細菌性腸炎の場合は抗生剤が必要なケースもあります。
また、細菌性胃腸炎の方が、ウイルス性胃腸炎に比べると症状が重く出る傾向があります。
ウイルスや細菌が体内に入ったとしても、免疫力の違いにより感染する人と感染しない人がいます。
免疫力が弱っていれば、体内に入ってくる細菌が悪さをするのを止められず、胃腸炎を発症してしまいます。
胃腸炎の原因は?
感染性胃腸炎には、非常に多彩な病原体が関わっています。
ウイルス | ノロウイルス・ロタウイルス・アデノウイルス・エンテロウイルス・サポウイルス・アストロウイルス |
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細菌性 | サルモネラ属・カンピロバクター・腸管ビブリオ・'(腸管出血性)大腸菌・細菌性赤痢・コレラ・腸チフス・Clostridium difficile腸炎・黄色ブドウ球菌・ウエルシュ菌など |
寄生虫 | 赤痢アメーバ症・ジアルジア症・クリプトスポリジイウム症・回虫症・腸アニサキスなど |
感染性胃腸炎の感染経路としては、汚染された水・食品からの感染・感染患者からの糞口感染・汚染された食器を介した感染などが考えられます。
細菌によるものは夏場に集中し、ウイルスによるものは秋から冬にかけて流行が多いとされていますが、1年を通してみられることもあります。
一方で、非感染性によるものには、食べ過ぎ、刺激物の過剰摂取(脂肪分、アルコール、辛いものなど)、卵や牛乳などの食物アレルギー、抗生物質などの内服薬、不安や緊張、イライラなどのストレス、自己免疫や炎症性腸疾患(IBD)など多くの原因が挙げられます。
胃腸炎の原因となる食事とは?
感染性胃腸炎の原因となりやすい食事は、ウイルスや細菌の種類によって異なります。
ノロウイルス | カキを含む二枚貝・魚介類など |
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ロタウイルス | 二枚貝・寿司・サラダ(海外の報告)など |
カンピロバクター | 鶏肉、牛生レバー、殺菌不十分な井戸水 |
サルモネラ属 | 生卵、鶏肉、豚肉 |
黄色ブドウ球菌 | 古くなったおにぎりや弁当など |
ウェルシュ菌 | 温め直したシチューやカレーなど |
ボツリヌス菌 | はちみつ、真空パックのからし蓮根など |
加熱処理によって病原体は死滅することが多いため、加熱処理することで多くの感染性腸炎は予防することができます。
しかし、黄色ブドウ球菌においては加熱処理をしても死滅しないので注意が必要です。
また、腐食した食品は加熱処理しても食中毒の原因となるので注意してください。
胃腸炎の検査は?
一般的な胃腸炎は、特別な治療法がないことから、ウイルス検査を行わず流行状況や症状から診断されることが多いです。
多くの場合はウイルス性胃腸炎であり、自然によくなる可能性が高いと考えられています。
胃腸炎の症状と似ているものとして、虫垂炎・憩室炎・膵炎・虚血性腸炎・大腸の悪性腫瘍・潰瘍性大腸炎・クローン病などが挙げられます。
適宜、血液検査・便検査・超音波検査・CT検査などを行い、必要な場合は高次医療機関にご紹介させていただきます。
胃腸炎の治療は?
多くの胃腸炎は、胃腸を休めることで改善します。
十分な水分と消化に優しい食べ物を摂取し、安静を保つことが治療の基本となります。
水分・糖分・ミネラルを適切に摂取しながら、脱水を避けることが治療の第一目標になります。
口からの水分が充分摂取できず、脱水の程度が強い場合には、点滴を行ないます。
症状緩和のために、吐き気止めや整腸剤が処方されることもあります。ビフィズス菌やそれを増やす作用の菌製剤は、病原細菌の増殖を抑える働きがあり、治療によく用いられます。
また、症状や合併症の有無などを適宜判断しながら、抗生物質が必要かどうかを判断します。
食事摂取のポイント
- 食べ物を消化・吸収しにくくなっているので、料理の際は食材を細かく刻んだり、柔らかく煮込んだりしましょう。
- 脂っこいものは避け、大根やレタスなどの消化の良いもの、またリンゴやバナナなどの果物がおすすめです。
- 小まめな水分補給が大事ですが、一度にたくさん飲むと気分が悪くなったり、下痢になったりしますので、少量に分けて飲水するようにしましょう。
胃腸炎を予防するには?
一般的な予防方法は、ウイルス性のものに対しては、流行期にしっかりと手洗いすること感染患者との濃厚な接触を避けることです。
細菌性においては、食品の加熱処理を十分に行うこと、また加熱された食品であっても気温が高い夏場などに長時間放置することは食中毒の原因となりますのでご注意ください。
いずれの病原体においても感染力が強いので、発症した時はまず、家族間など家庭内あるいは集団内で感染を拡げないように注意しましょう。
感染性胃腸炎の患者が嘔吐や排泄したものが飛散した場合や、それを掃除・処理することでも二次感染を起こす危険性もあります。
掃除・処理を行う際にはしっかりとマスクやゴム手袋、エプロン着用など感染防御に徹底し、手袋を外した後にも石けんと流水で十分に手洗いを行うことを徹底しましょう。
なお、熱処理も有効です。
ご家庭の場合は、スチームアイロンなどを活用しカーペットなどについた吐物の後の処理に使用するのもよいでしょう。
また、一般的なアルコール消毒では死滅しないウイルスもおりますので、次亜塩素酸ナトリウムが入った家庭用洗剤(キッチンハイター)などで消毒すると効果的です。
手洗い等で使用するタオル等は清潔なものとし、共用は避けましょう。
トイレ・風呂などの共用部分を衛生的に保つようにしましょう。
また便器や便座、トイレのレバーやドアノブなども消毒するなど、感染予防に努めることが大事です。