禁煙外来
喫煙者が禁煙する場合、我慢をして禁煙をしてもその半数以上の方が半年以内に喫煙を再開してしまい、さらに1年後も禁煙出来ている方はおよそ10%と言われています。
自己流の禁煙で断念した方、失敗した方、禁煙希望しているけれどなかなか始められない方など、当院では禁煙を決意された方のために、患者さんが完全に禁煙できるように身体的・精神的にサポートしています。
目次
タバコについて
タバコは、ニコチンの作用による脳や身体への快感などの身体的依存だけでなく、ホッとする、スッキリするといった気持ちの上での心理的依存が重なっているため、自分の意思の力だけでは、なかなかやめることができません。
有害物質
タバコの煙の中には、5,300種類以上の化学物質が含まれております。
その中には、200種類以上の有害物質が含まれ、発がん性物質は70種類以上にのぼると言われています。
有害物質のなかでも、よく知られているのは、ニコチン、タール、一酸化炭素です。
そのほかにも、ペンキ除去剤に使われるアセトンや、アリの駆除剤に含まれているヒ素、車のバッテリーに使われているカドミウムなど、体に大変有害な物質がタバコの煙に含まれています。
引き起こされる病気
タバコによって肺がんやCOPD(肺気腫)などの呼吸器疾患が引き起こされるだけでなく、胃がんや食道がん、子宮頚がんなどの呼吸器以外の発がんリスクも上昇したり、動脈硬化を引き起こすことにより心筋梗塞や脳卒中の発症リスクが上昇します。
しかしこれらは禁煙によりそのリスクを確実に低下させることができます。
またタバコは全身の老化を早める作用があり、将来の寝たきりになるリスクを高めるだけでなく、シワや肌のくすみを引き起こすなど美容面にも良くない影響を及ぼしたり、男性ではEDの原因になることもあります。
受動喫煙
タバコの煙はタバコを吸う人が直接吸い込む「主流煙」と、タバコから立ち上る「副流煙」に別れ、副流煙には、主流煙に比べてニコチンやタールなどを初めとした有害物質が数倍多く含まれます。この副流煙を周りの人が吸い込んでしまうことを受動喫煙と言います。
受動喫煙を受けた人は、がんや心筋梗塞、脳卒中などの病気のリスクが上昇し、また妊婦や赤ちゃんにも悪影響を及ぼすことになります。
ニコチン依存症
タバコに含まれるニコチンは強い依存性を持つ物質であり、ヘロインやコカインなどの危険薬物よりも強い依存性を示すと言われています。血中のニコチン濃度がある一定以下になると不快感を覚え、喫煙を繰り返してしまいます。
タバコを吸うと、血中を通してすぐにニコチンが脳に達し、快感を生じさせるドーパミンが放出されるという現象です。
禁煙外来の適応とは?
禁煙治療を健康保険で受けるためには一定の要件があり、1回目の診察で医師が確認することになっています。
なお、要件を満たさない場合でも、「自由診療」で禁煙治療を受けることができます。
禁煙治療を保険で受けることができる条件は、以下の5項目をすべて満たすことです。
- ただちに禁煙しようと考えていること
- スクリーニングテスト(TDS)によりニコチン依存症と診断(TDS が5点以上)されること
- ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の場合(35歳未満は不要)
- 禁煙治療を受けることに文書で同意すること
- 過去1年以内に保険を使った禁煙外来診療を受けていないこと
過去に健康保険等で禁煙治療を受けたことのある方の場合、前回の治療の初回診察日から1年が経過しないうちは、「自由診療」となります。
ニコチン依存症を診断するテスト(TDS)について
ニコチン依存症を判定するテスト(TDS)で、10項目の質問に5つ以上当てはまる場合はニコチン依存症と判定されます。
Q1 | 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか。 |
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Q2 | 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか。 |
Q3 | 禁煙したり本数を減らそうとした時に、タバコが欲しくてたまらなくなることがありましたか。 |
Q4 | 禁煙したり本数を減らそうとした時に、次のどれかがありましたか。 ・イライラ ・神経質 ・落ち着かない ・集中しにくい ・憂うつ ・頭痛 ・眠気 ・胃のむかつき ・脈が遅い ・手の震え ・食欲または体重の増加 |
Q5 | 「4」でうかがった症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか。 |
Q6 | 重い病気にかかった時に、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか。 |
Q7 | タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。 |
Q8 | タバコのために自分に精神的問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか。 |
Q9 | 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか。 |
Q10 | タバコが吸えないような仕事やつき合いを避けることが何度かありましたか。 |
禁煙外来の効果とは?
- 肺がんや咽頭がんなどの悪性腫瘍、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、心臓病、脳卒中など様々な病気のリスクを下げることができる
- 咳や痰が止まり、呼吸が楽になる
- 胃の調子が良くなり、食欲が出る
- 衣服や部屋がタバコ臭くなくなる
- 目覚めがさわやかになる
- 肌の調子が良くなる
- 口臭がしなくなる
- 肩こりがなくなる
- カラオケで声がよく出るようになる
など多くのメリットがあります。
禁煙外来の流れについて
当院では、禁煙補助薬を使用した禁煙治療をおこなっております。
禁煙補助薬としては内服薬(チャンピックスR)とニコチンパッチ(ニコチネルTTSR)のいずれか一つが使用できます。
ニコチンパッチはニコチンを含む貼り薬で、飲み薬はニコチンを含まない飲み薬となっています。飲み薬の方はニコチンを含まないため、循環器疾患の患者さんにも使いやすいという特徴があります。どちらの薬を使うかは、外来診察時に決定します。
健康保険適用の禁煙外来の場合、初回診察から2週間後、4週間後、8週間後、12週間後と計5回の診察を受けて頂きます。
- 喫煙(禁煙)状況の確認、体調チェックなど
- 呼気中の一酸化炭素量の測定
- 禁煙を継続するためのアドバイス
- 禁煙補助薬の効果の確認、副作用の対応など
通院初回
喫煙状況やニコチン依存度、禁煙の関心度などをチェックします。
呼気に含まれる代表的な有害物質(一酸化炭素)の濃度測定を行います。
相談しながら禁煙開始日を決定し、「禁煙治療同意書」にサインします。
禁煙補助薬を選択し、その特徴と使い方をご説明いたします。
禁煙開始
禁煙補助薬の内服開始から一週間後に禁煙を「スタート」します。
通院2~4回目
それぞれ初診から2、4、8週間後の受診日です。
呼気一酸化炭素濃度の測定、および禁煙状況のチェックとアドバイスを受けます。
通院5回目
初診から12週間後(約3ヶ月後)で、最後の受診で、これで禁煙治療は「完了」です。
前回までと同様に呼気一酸化炭素濃度の測定を行い、以降、禁煙を続けていく上でのアドバイスを受けます。
禁煙治療にかかる費用(保険で3割負担の場合)は、処方される薬にもよりますが約3ヶ月の治療スケジュールで13,000円~20,000円程度です。
タバコを1日1箱吸う場合、8~12週間分のタバコ代よりも禁煙治療代の方が安くなります。
12週間のプログラム終了後であっても、自由診療でなら禁煙補助薬を継続することが可能です。その場合はご相談ください。
※2021年9月以降、禁煙補助薬「チャンピックス」の供給が不足しています。
ファイザー社によれば同薬の供給再開は2022年後半以降になる見込みとのことです。
当面の間禁煙外来はニコチンパッチ製剤のみで対応させていただくことになります。
どうぞご了承ください。