糖尿病
最近、日本では糖尿病が強く疑われる方が増え続けています。
しかし糖尿病には自覚症状がほとんどないため、放置したままの人が多く、実際に治療を受けているのはその約10分の1しかいないのが現状です。
放置をすると、全身の血管や神経が障害され、さまざまな合併症が現れるため注意が必要です。
目次
糖尿病とは?
私たちが生きていくための大切なエネルギー源として血液中にブドウ糖が存在します。
このブドウ糖がなくては生きていけませんが、多すぎてもよくありません。
糖尿病とは、インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖(血糖)が正常よりも高い状態が続く病気です。インスリンは膵臓から出るホルモンであり、血糖を一定の範囲におさめる働きを担っています。
血糖値が何年間も高いままで放置されると、血管が傷つき、将来的に心臓病や、失明、腎不全、足の切断といった合併症につながります。また、著しく高い血糖は、それだけで昏睡などを起こすことがあります。
糖尿病の種類とは?
糖尿病は発症要因から大きく1型、2型に分けられます。
日本人では糖尿病患者さんの約95%が2型糖尿病といわれています。
1型糖尿病 | 2型糖尿病 | |
---|---|---|
小児や若年に多い (ただし何歳でも発症する) |
発症年齢 | 中高年に多い |
急激に発症し、症状の悪化も急速。 | 症状 | ゆるやかに発病し、進行もゆっくり |
やせ型の方が多い | 体型 | 肥満の方が多いが、やせ型の方もいる |
・1型糖尿病にかかりやすい体質を持っている。 ・何らかの原因によりすい臓の一部が破壊され、インスリンがほとんど作られない。 |
原因 | ・肥満の人 ・家族に糖尿病の患者がいる人 ・著しい運動不足など ・過度なストレス ・暴飲暴食 生活習慣や遺伝的要因により、インスリンの分泌量が少なかったり、適切に働かない。 |
インスリンの注射 | 治療 | 食事療法・運動療法、飲み薬、場合によってはインスリンなどの注射を使う |
起こしやすい | ケトアシドーシス | まれに起こす |
そのため、2型糖尿病の場合は、こうした原因に気をつけて日常生活をおくることができれば、糖尿病になりにくい体をつくることができます。
一方で1型糖尿病の場合は、突然発症し、一部ではインスリンをつくるすい臓のβ細胞がウイルス感染により破壊されるといわれていますが、その原因と予防は確立されていません。
糖尿病の症状とは?
糖尿病はほとんどの場合自覚症がありません。
しかし症状が進行すると、下のような症状が現れることがあります。
- 異常な空腹感やのどの渇き
- 尿の量や回数が増える
- 体重の急激な減少
- 疲れやすくなる
- 手足の感覚が低下する、または、チクチク指すような痛みがある
- 目がかすむ
- 性機能の問題(ED)
- 切り傷やその他の皮膚の傷が治りにくい
- 皮膚のかゆみ
などです。
さらに血糖値が高くなると、意識障害に至ることもあります。
症状がまったくないまま健診などで糖尿病が判明する方もいれば、急に高血糖の症状が現れて糖尿病が判明する方もいます。また、眼や腎臓の合併症の症状が現れて、初めて糖尿病と診断される方もいます。
糖尿病の検査・診断とは?
糖尿病を診断するためには、次の3つの検査方法があります。
1)早朝空腹時血糖値
前日の夕食後、何も食べず翌朝、血糖値を測定します。126㎎/dL以上の場合は「糖尿病型」です。
2)ブドウ糖負荷試験2時間値
75gのブドウ糖液を飲み、その2時間後に再び血糖値を測定します。200㎎/dL以上の場合は「糖尿病型」です。
3)随時血糖やHbA1c
食事時間とは関係なく測定した血糖値(随時血糖)が200㎎/dL以上の場合や、HbA1cが6.5%以上(NGSP値)の場合も「糖尿病型」です。HbA1cとは1~2カ月前の血糖値を反映する検査値です。
糖尿病の合併症とは?
血糖値が高い状態が長く続くと、合併症が起こる可能性が高くなります。
治療をきちんと行い血糖コントロールをすることで、新たな合併症が起こるのを防ぎ、また、起きてしまった合併症の進行を抑えることができます。
糖尿病発症後5~10年で現れ、糖尿病の罹患期間が長いほど、発症しやすくなります。
糖尿病の三大合併症
糖尿病網膜症
目のかすみ、目のまぶしさ、視力低下、失明など
糖尿病腎症
疲れ、タンパク尿、むくみ、腎不全、尿毒症、人工透析など
糖尿病神経障害
手足のしびれや痛み、感覚麻痺、立ちくらみ、発汗異常、排尿障害、下痢や便秘など
その他
脳梗塞、心筋梗塞や狭心症、下肢閉塞性動脈硬化症、潰瘍や壊疽、歯周病、骨粗しょう症など
糖尿病の治療とは?
合併症をおこさないためにも、正しい治療を受けましょう。
合併症は糖尿病になったら必ず起こるわけではなく、適切な血糖コントロールで防ぐことができます。
正しい治療を続け、定期的な検査と診察を受けることが大切です。
また食事・運動療法は毎日の暮らしに取り入れるようつとめましょう。
食事療法
糖尿病治療の基本は、食事療法です。
一日3回、決められたカロリーの範囲内で、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルをバランスよくとる工夫が大切です。そうすることで、すい臓の負担は軽くなり、すい臓の十分な能力は回復されます。
- 規則正しい食事を心がけ、食べ過ぎ、間食や果物の摂り過ぎに注意
- 外食をするときは、和食や和風の定食をとる機会を多めに
- バター、マーガリンやドレッシング、揚げものや油炒めなどはカロリーが高いので注意
- 野菜、海草、玄米、麦ごはん、キノコ類などから食物繊維を積極的にとること
- 主菜をとりすぎる場合が多い方は、おかずの量に注意
運動療法
運動療法には、肥満解消のほか、心肺機能の向上、動脈硬化の予防、筋肉の強化、ストレス解消などの目的があります。
また運動をして血糖が下がると、体が要求するインスリンの量が減るという、インスリンの節約効果もみられます。
ウォーキング、ストレッチ運動、軽いジョギング、サイクリングなどの有酸素運動は、エネルギー効率がよく、また全身をゆるやかにまんべんなく動かすことができるよい運動の方法です。軽~中等度の運動をなるべく長時間行うようにしましょう。
たとえば「通勤の駅を1つ手前で降りて歩いてみる」、「エレベーター・エスカレーターをできるだけ使わずに階段を利用する」「歯磨きしながらのつま先立ち体操」などもひとつの運動の方法です。日常生活の中のちょっとした工夫が糖尿病になりにくい体をつくります。
薬物療法
食事・運動療法を2か月以上継続しても血糖コントロールできない2型糖尿病患者さんには、飲み薬を使うことがあります。また1型糖尿病の患者さんと、飲み薬の効果が得られなかった2型糖尿病の患者さんは、インスリン注射を行います。