不眠症
不眠症とは、睡眠問題が1ヶ月以上続き、日中に倦怠感・意欲低下・集中力低下・食欲低下などの不調が出現する病気です。
不眠の原因は多岐に渡り、それぞれの原因に応じた対処が必要です。
成人の約30%が不眠症状を有しており、約10%は不眠症に罹患しているといわれています。
また、男性よりも女性に多いといわれています。
近年ではコロナ禍で生活リズムが崩れ、眠れなくなった方も増えてきています。
目次
不眠症とは?
不眠症とは、夜間の不眠症状が週に2回以上あり、その状態が少なくとも1か月以上持続し、日中のパフォーマンスが低下した状態と定義されています。
精神的なストレスや身体的な苦痛により一時的に夜間眠れない状態は、不眠症とは言いません。
不眠症の原因は?
大部分の不眠症にはそれぞれ原因があり対処法も異なります。
主な不眠の原因は以下の通りです。
体調不良
風邪や腹痛、頭痛など体調を崩すことによって、眠りが浅くなり、悪夢を見ることがあります。
この場合、原因となっている病気や症状の治療を行います。
ストレス
仕事や家庭環境・人間関係などによるストレスや緊張は、安らかな眠りを妨げます。
神経質で生真面目な性格の人は注意が必要です。
引っ越しや転職などの日常生活の中での環境の変化もストレス負荷となります。
からだの病気
睡眠時無呼吸症候群や脳神経疾患・呼吸器疾患などの基礎疾患など、さまざまなからだの病気で不眠が生じます。
不眠そのものより背後にある病気の治療が先決です。
こころの病気
統合失調症、うつ病、不安障害などの精神疾患は不眠を伴います。
寝付けないだけでなく、気持ちが重たく、物事への関心がなくなり、好きだったことが楽しめない場合、うつ病の可能性があります。
薬や刺激物
降圧剤・甲状腺製剤・抗がん剤などの治療薬が不眠を伴います。
また、コーヒー・紅茶などに含まれるカフェイン、たばこに含まれるニコチンなどには覚醒作用があり、安眠を妨げます。
カフェイン、アルコールには利尿作用もあり、トイレ覚醒も増えます。
また、アルコールには睡眠導入には効果がありますが、逆に睡眠を浅くしてしまいます。
生活リズムの乱れ
交替制勤務や時差などによって、睡眠習慣の問題や睡眠リズムの乱れによって不眠を招きます。
環境要因
騒音や光が気になる場合や、寝室の温度や湿度が適切でない場合は安眠できません。
他にも、寝具が変わったり合わなかったりする、普段と違う場所で寝る、明るさなどの物理的な影響なども挙げられます。
不眠症の種類とは?
眠れない時間帯を基準とした分類が用いられ、大きく分けて4つのタイプがあります。
なお、これらの症状は同時に複数現れることがあります。
入眠障害
寝付くまでに30分~1時間以上かかるタイプです。
精神的な問題を抱えている時、不安や緊張が強い時などにおこりやすいといわれています。不眠症の中では一番多いタイプです。
中途覚醒
睡眠中に眠りが浅く途中で何度も目が覚めてしまうタイプです。
目が覚める時間や回数は個人差があります。
充分に寝た気がしなく、目覚めたときにぐっすり眠れたという熟睡感がありません。
早朝覚醒
本来の起きる時間より2時間以上前に目が覚めてしまい、その後眠れなくなってしまうタイプです。
高齢者は体内時計のリズムが前にずれやすく、若い人に比べて夜遅くまで起きていられなくなるので、早寝早起きになります。
熟眠障害
十分な睡眠時間を取っていても眠りが浅く、熟眠感が得られないタイプです。
高齢者の不眠や神経質な人に多いとされています。
不眠症の治療とは?
不眠症の治療では、まず不眠の原因を診断し、薬物療法以外の治療を行います。
他の疾患が不眠の原因となっている場合は、背後にある病気の治療が優先となります。
さらに日常生活を見直し、不眠症の原因となる生活習慣を改善していきます。
それでも改善ない場合には、不眠症のタイプに合わせてお薬を処方していきます。
治療のゴールとは、薬物治療により十分な睡眠を得ることではなく、薬に頼らずとも十分な睡眠が得られるような生活習慣を作り出すことです。
不眠症を放置すると?
睡眠は心身の回復、記憶の定着、免疫機能を強化する働きがあります。
そのため不眠が続くと、眠気・倦怠感・意欲低下・集中力低下・抑うつ・頭重・めまい・食欲不振などの精神症状を引き起こします。
その結果として医療費の増加、生産性の低下、交通事故の増加などの様々な人的及び社会経済的損失をもたらすことが報告され、社会問題となっています。
生活習慣病やうつ病のリスクも高くなることがあります。
不眠症を予防するには?
人間にとって重要な睡眠には、日中の活動で使った脳と体を休養する役割の他に、記憶の整理・定着、ホルモンバランスの調整などの役割があります。
以下のことに気をつけて、睡眠の質を高めていきましょう。
一定の就寝・起床時間
睡眠覚醒は体内時計で調整されています。
週末の夜ふかしや休日の寝坊、昼寝のしすぎはいけません。
平日・週末にかかわらず同じ時刻に起床・就床する習慣を身につけることが大切です。
食生活の改善
規則正しい食生活をして、空腹のまま寝ないようにしましょう。空腹で寝ると睡眠は妨げられます。
就寝前に水分を取り過ぎないようにしましょう。夜中のトイレ回数が減ります。
就寝前の4時間前からは覚醒作用・利尿作用のあるカフェイン(日本茶、コーヒー、紅茶、コーラ、チョコレートなど)は取らないようにしましょう。
睡眠時間にこだわらない
睡眠時間には個人差があり、加齢とともに自然と短くなっていきます。
重要なのは睡眠時間ではなく、日中に眠気が残らないことです。
日中に眠気があるときは午後3時前までに30分以内の昼寝をとると効果的です。
適度の運動をする
ほどよい肉体的疲労は心地よい眠りを生み出してくれます。
厳しい運動は刺激になって寝付きを悪くするため逆効果です。
短期間の集中的な運動よりも、負担にならない程度の有酸素運動を定期的に継続することが効果的です。
ストレス解消法を見つける
ストレスは眠りにとって大敵です。音楽・読書・スポーツ・旅行など、自分に合った趣味をみつけて上手に気分転換をはかり、ストレスをためないようにしましょう。
寝酒を控える
寝酒をすると寝付きが良くなるように思えますが、効果は短時間しか続きません。
飲酒後は深い睡眠が減り、早朝覚醒が増えてきます。
寝室環境
快適な就床環境のもとで、睡眠の質を向上させましょう。
寝具 | ベッド・布団・枕・照明などは自分に合ったものを選択 |
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温度・湿度 | 適温は20℃前後、湿度は40%-60%前後 |
入浴 | 眠る1~2時間前、お湯の温度は40度弱 |
照明 | 白っぽい色味の照明や明るい照明は避ける |
液晶 | ブルーライトには覚醒効果があるため直前の使用を控える |
リラックス | 音楽や読書などで、副交感神経を活性化させる |
不眠恐怖をなくす
眠れない日が続くと不安になり、早く眠らなければと焦れば焦るほど目が冴えてしまいます。
眠気がなくとも寝床で過ごしていると、不眠が悪化してしまいます。
ある一定の時間眠れなければベッドから出る、前日の睡眠状態にかかわらず日中はなるべく活動的に過ごすことが大切です。
以上のことを踏まえた上で快適な睡眠を確保するようにし、いきいきとした健康な生活や事故の防止につなげていきましょう。